日本小児神経学会
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Q8:現在未承認の新しい抗てんかん薬について教えてください。

A:2006年9月に新しい抗てんかん薬ガバペンチン(gabapentin)が発売となりましたが、これに引き続き、現在トピラマート(topiramate)とラモトリギン(lamotrigine)という2種類の新しい抗てんかん薬が治験を終了し承認申請中となっており、ここ数年以内に発売開始となる見込みです。適応症に関しては、トピラマートは成人(16歳以上)に対する「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する他の抗てんかん薬との併用療法」を申請中。ラモトリギンは「他の抗てんかん薬で十分な効果がみとめられないてんかん患者の、部分発作と全般発作に対する他の抗てんかん薬との併用療法」を小児を含めた適応で申請中です。

トピラマートは1996年アメリカで発売された抗てんかん薬で、既に全世界70カ国以上で発売されています。日本では協和発酵が1991年から開発しています。部分てんかんにも全般てんかんにも幅広く有効であり、小児の難治性てんかんであるレンノックス・ガストー症候群にも有効性が示されています。海外の成績では、
1)成人の難治性部分てんかんに対する他剤との併用療法で43%に有効(発作減少率50%以上)、5%で発作消失 
2)小児の難治性部分てんかんに対して投与量を多めに設定することで64%に有効、14%で半年以上の発作消失
3)全般てんかんに対する他剤との併用療法で43%に有効
4)レンノックス・ガストー症候群に対し55%で失立発作の50%以上の減少、などの報告があります。
トピラマートの抗てんかん作用の詳しい機序は不明ですが、電位依存性Naチャンネルの抑制、GABAによる抑制性神経伝達の増強、脳内GABA濃度上昇、グルタミン酸による興奮性神経伝達の抑制など様々な仕組みによって、てんかん発作を起こす電気活動を抑制するものと考えられています。副作用としては、眠気、ふらつきなどが主ですが、その他に、尿路結石、知覚障害、体重減少が知られています。欧米のデータでは尿路結石は1.5%に認められています。また、知覚障害は出現しても一過性のものが多いようです。
ラモトリギンは1970年代にイギリスで開発された薬です。世界的には1980年代半ばより臨床試験が開始され、1990年代末には世界中で100万人以上の患者さんが使用するようになりました。日本でもグラクソ・スミスクライン社が、現在治験を終了し申請中です。トピラマートと同様、ラモトリギンも部分てんかんにも全般てんかんにも幅広く有効な薬剤であり、レンノックス・ガストー症候群にも有効性が示されています。欧米の成績では、
1)成人の部分てんかんに対する他剤との併用療法で36%に有効(発作減少率50%以上)
2)部分てんかんに対する単剤投与でカルバマゼピンやフェニトインと同等の効果 
3)レンノックス・ガストー症候群に対して32%の発作頻度減少 
4)小児欠神てんかんや若年ミオクロニーてんかんなど特発性全般てんかんにも有効、などの報告があります。
ラモトリギンの主な抗てんかん作用は、電位依存性Naチャンネルを抑制し興奮性のアミノ酸であるグルタミン酸の放出を抑えることにあると考えられています。眠気やふらつきの副作用は他の抗てんかん薬に比べて軽度とされます。その他の副作用としては薬疹が知られており、使い始めるときには、ゆっくり増量していくなどの配慮が必要です。

その他、日本国内での抗てんかん薬の動向としては、レベチラセタム(levetiracetam)が治験中であり、オクスカルバゼピン(oxcarbazepine)、フォスフェニトイン(fosphenytoin)が治験準備中となっています。レべチラセタムは、日本でミオクローヌス治療剤として販売されているピラセタム(piracetam)の誘導体で、難治性部分発作に対する効果が期待される薬剤です。オクスカルバゼピンは既に市販されているカルバマゼピン類似の構造を持つ薬剤で、単剤での効果はカルバマゼピンと同等とされますが、薬物相互作用や副作用が少なく、より使いやすい薬剤とされます。フォスフェニトインは、投与後体内で素早くフェニトインに代謝され効力を発揮する注射剤です。フェニトインに比べて組織障害性が低く静脈炎を起こしません。筋肉内投与も可能です。また呼吸器系や循環器系に対する副作用に関してもフェニトインに比べて安全であるとされ、てんかん重積症の治療などへの使用が検討されています。

以上、これから出てくる新しい抗てんかん薬について概説しました。治療薬選択の幅が増えることで、これまで難治であった患者さんにも、新規にてんかんを発症した患者さんにも、より効果的でかつ安全なてんかんの薬物治療が成されることが期待されます。

(金沢大学医学部附属病院小児科 新井田 要)


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