日本小児神経学会
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Q50 脳性麻痺へのボトックス治療の現状と問題点について教えて下さい。

・ 国内で何人の脳性麻痺児が治療を受けていますか?

 2010年から手や足を含めどの部位でも治療できるようになり、2013年9月までに約11,600名の小児が治療を受けています。これは国内の脳性麻痺児の約35%になりますが、欧州主要国の70〜80%の普及率と比べてはるかに及びません。ボトックス治療は、筋肉のつっぱりを軽減するのに大変効果がありますが、国内ではまだあまり広く知られていない状況です。

・ 運動発達を良くするのに、いつから治療を始めるとよいですか?

 軽症の歩ける幼児でも、かかとを着地しない、つま先歩きの悪い歩行習慣がみられれば、2〜3歳の早くから治療し、正しい歩き方を促すべきです。もし、つま先歩きが続けば、早いと4〜5歳には足首が変形してしまうからです。同様に、手のひらを上に向けられず、自分の顔を上手に洗えない、あるいは上手に茶碗を持てない場合でも、3〜4歳から手の治療を開始します。このような軽い脳性麻痺では、治療後に予想以上に早く運動機能が改善して、数回の治療で終了できる可能性があります。

・ 股関節脱臼や側わんなどの変形を防げますか?

重症の脳性麻痺では、骨格変形が徐々に進み、座りにくくなったり着替えにくくなります。残念ながら、ボトックス治療でも、股関節脱臼や側わんなどを成人期まで完全に予防することは困難です。しかし、ボトックス治療に毎日のストレッチと装具療法を併用すれば、骨格変形の進行を50%以上遅らせ、整形外科手術を5〜10年延期させることは十分可能です。

・ ボトックス治療でよくみる副作用はありますか?

経験する副作用のほとんどは、治療した筋肉の過度な脱力です。この副作用は、くすりの量を少なく設定すれば回避できます。また、のみ込みの弱い重症心身障害児の場合、嚥下や呼吸が弱くなる副作用をみることがあるので、たとえ手足の治療でも、できるだけ少量から治療を開始します。ただし、これらの副作用が重篤であることは極めてまれで、1〜4週間以内には自然回復します。

・ ボトックス治療は何ヶ月おきに受けるのでしょうか?

 治療の間隔には、投与するボトックスの量が関係します。実際にくすりの量が少ないと、効果が不十分だったり、1〜3ヶ月の短い期間で効果が消失します。逆にくすりの量が多いと、効果は4ヶ月以上持続しますが、副作用を生じやすくなります。望ましい治療経過とは、問題となる副作用がなく、治療効果は4〜5ヶ月間持続し、5〜6ヶ月おきの治療でよい場合です。したがって、ボトックスの投与量は、そのような有効期間が得られるまで、段階的に増量します。また、リハビリテーションも重要で、毎日のストレッチと運動療法によって、治療効果がより長く持続します。

・ ボトックス治療の際、麻酔しますか?

 多くの場合、1回の治療で10ヶ所以上に注射をするので、安静を保てない非協力的な小児では、医療安全上かつ本人の心的外傷を最小限に軽減するために、鎮静して治療するのが適当です。局所麻酔薬のテープやクリームもいくらか有用ですが、吸入麻酔薬あるいは静脈麻酔薬による鎮静の方がより確実です。

(横浜療育医療センター神経小児科 根津敦夫)


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