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睡眠関連病態2

Q43 : 中学3年の女子です。日中突然眠ってしまうようになり、病院でナルコレプシーと診断されました。ナルコレプシーの症状や検査、治療について教えてください。

A ナルコレプシーの代表的な症状は、ご質問にもある「日中突然眠ってしまう」睡眠発作です。ただ寝不足の時や午後2時ごろには誰でも眠くなります。眠くなるからすぐにナルコレプシーを疑う、というわけではありません。

 ナルコレプシーの方の症状は、例えば会議のプレゼン中に寝てしまう、自転車をこいでいる最中に寝てしまう、試験中に寝てしまう、野球の試合中守っている間に寝てしまう、といった通常考えにくい場面での「睡眠発作」です。このほか喜びや驚きといった強い情動をきっかけに全身の力が抜けてしまう発作(情動脱力発作)を起こす方もいます。また、ナルコレプシーの方の場合、寝入りばなからレム睡眠となって夢(怖い夢のことがあります)を見てしまうことが多いです(注1)。これは入眠時幻覚と呼ばれますが、場合によっては現実との区別が難しく、幻覚と判断され、統合失調症と間違われてしまう場合もあります。さらに通常夢を見ている時には脳から全身に動くな、という命令が出ていて、夢通りの行動は起こすことができません。そこで目が覚めたのに、この命令がとれていないと、いわゆる金縛り(睡眠麻痺)、となります。ナルコレプシーの方では睡眠麻痺を経験なさる方も少なくありません。

 患者さんは600人に1人程度はいるようです。オレキシンという物質の脳脊髄液(注2)中の濃度がきわめて低い方が、患者さんの中にはいます。風邪などをきっかけに急に症状が出る方もあることから、感染がきっかけとなって、オレキシンを作る神経細胞が感染源と間違って攻撃され、オレキシンを作れなくなる、という仮説も提唱されています。最近になって、ナルコレプシーの患者さんでは免疫を担っている細胞に一定の異常があることが発見され、この仮説に関心が高まっています。

 検査としては眠気に関する検査、オレキシンに関する検査、免疫に関する検査があります。昼間暗い部屋で横になっていただき、眠るまでの時間を2時間ごとに脳波を記録する検査(反復睡眠潜時検査)で眠気を測るのですが、この検査をきちんとできる施設は日本ではまだ限られています。オレキシンの測定は研究レベルでしかおこなわれておらず,免疫に関する白血球型の検査も日本では保険適応は認められていません。

 怠け者とのレッテルを貼られてしまっている患者さんもまだ相当おいでのようです。正しい理解で、患者さんに適切な治療を提供できることが望まれます。

 睡眠発作や情動脱力発作が薬で改善される場合もあります。また、「眠くなる」病気なのに、夜はしっかりと眠れない患者さんも少なくありません。そのような場合、睡眠導入剤の併用が必要にもなります。理論的にはオレキシンの少ない方にはオレキシンを補充すると良いのですが,それはまだ実用化されていません。また、短時間眠ることで一時的にせよ眠気がなくなることが多いので、患者さんがご自身で様々に日常生活に工夫して過ごされている方が多いようです。なおこの病気の方では肥満や糖尿病の合併が多い事や夜間の眠りの質が悪い事も指摘されています。

 このようにナルコレプシーは診断もその後の薬物治療にも経験が必要です。是非専門の医師に相談していただきたいと思います。

注1;睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠があり、通常寝入りばなはノンレム睡眠です。レム睡眠は夢を見る睡眠段階で入眠してから90−100分ごとに数回繰り返されます。
注2;脳が浸っている液体で、背中に針を刺して採ります。

(東京ベイ・浦安市川医療センター 神山 潤)


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