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Q30: 重症の障害をもつこどもさんの問題3

Q30-1脳性麻痺で寝たきりのこどもです。けいれん発作がなかなか止まらず困っています。
重症心身障害児に伴うてんかんについて教えて下さい。

A重症心身障害児では、てんかんの合併は60〜70%と極めて高頻度です。一般人口におけるてんかん罹患率は0.5〜0.9%ですから、約100倍ということになります。そして、そのほとんどが脳の器質病変を背景とする症候性てんかんに分類されます。それ故、治療抵抗性のてんかんが多く、約30〜40%は月単位以上の発作を示す難治性の経過をとるとされています。そして、てんかん発症は小児期早期がほとんどで、その多くが成人期までキャリーオーバーしており、長期に渡っててんかんが日常生活を制限しているばかりでなく、障害の増悪にも少なからず関与していると思われます。

 重症心身障害児のてんかんの診断や治療は通常のてんかんと基本的には変りません。まず、診断に関しては、発作症状の観察が最も重要になります。しかし、重症心身障害児では四肢の麻痺や変形・拘縮などがあり、運動発作(けいれん)であってもてんかん発作の確認は難しく、異常筋緊張亢進(ツッパリ)などを発作と誤認することもしばしばあります。また、精神遅滞があることで自覚発作を表現できない、表情が乏しく意識減損発作(複雑部分発作)が解りにくいなど難しい点が多々あります。てんかん発作は日常活動と明らかに異なる発作性のエピソードで、かつ、繰り返すことが特徴です。このことを念頭において日常観察することが重要で、てんかん発作が疑われた場合には脳波所見も参考にして発作型を診断する必要があります。
なお、複数の発作を有していることも稀ではなく(分類不能または混合発作型てんかん)、各々の発作について詳細に観察する必要があります。

 治療に関しては、発作型に添って抗てんかん薬の種類が決まります。そのためにも発作の正確な観察は重要です。重症心身障害児においても全般発作にバルプロ酸、部分発作にカルバマゼピンが基本ですが、発作抑制不良や複数発作例では多剤併用を余儀なくされることが多いのが実状です。副反応についても発作の観察と同様ですが、重症心身障害児では副反応の出現が高く、かつ、他の薬剤を併用していることが多いために、少量から開始しゆっくり漸増する方法が適切です。発作を止めることだけでなく副作用を少なくして日常生活の質をあげることも大事です。また、最近、新規抗てんかん薬が相次いで承認市販されましたが、重症心身障害児のてんかんにおいても効果が期待できます。

 小児てんかんの多くは年齢(脳の発達)に伴って発症し経過する特徴があります。重症心身障害児のてんかんにおいても年齢に伴う変化は少なからず認められ(特に思春期、青年期)、年齢発達を考慮した長期的戦略を立てて対応することが重要と考えます。

(長岡療育園 小西 徹)


Q30-2重症の脳性麻痺のこどもです。すぐに緊張が強くなり、苦しそうで見ていてかわいそうです。対処の仕方を教えて下さい。

A 重症心身障害児では四肢の麻痺に伴って筋緊張異常を示します。

筋緊張異常は、
   1)亢進:痙直や固縮、痙直と固縮の混在
   2)低下:筋力低下と関節の過伸展
   3)変動:アテトーゼやジストニーなどの不随意運動
に分けられます。重症心身障害の8〜9割は、痙直・固縮またはアテトーゼの筋緊張亢進を示します。筋緊張亢進は関節変形・拘縮、側彎症のみならず呼吸、循環、消化器障害などの二次的な合併症を引き起こし、さらに、これらの合併症が逆に筋緊張亢進を増悪させる可能性があります。そのため、筋緊張亢進(過緊張)に対する対応・治療は重症心身障害児の生活の質(QOL)を維持する上で重要です。

 過緊張に対する治療としては、以下のものがあります。

1.訓練を含めた一般的対応

1) ポジショニング:個々の運動障害や変形・拘縮を考慮してリラックスできる体位姿勢をとらせる。クッション・枕やベッド素材を工夫することも良い方法です。しかし、良姿勢でも長時間同一姿勢をとらせることは問題であり、普段より色々の体位が取れるように工夫することも重要です。最近、腹臥位(うつ伏せ)が筋緊張緩和や排痰に有効とされています。
2) 生活リズムや心理的対応:睡眠障害や生活リズムの乱れ、環境の急変・過度の刺激は筋緊張亢進に繋がるために、安定を図ることが重要です。
3) 訓練や補装具:関節可動域訓練や筋マッサージは変形・拘縮予防のみならず機能維持のために重要であり、定期的に実施する必要があります。また、安楽な姿勢保持を目指しての座位保持装置、車椅子、クッションチェアも有用です。

2.薬物療法

1) ベンゾジアゼパム系薬剤:使いやすく、鎮静、催眠効果を併せ持っている。
2) 抗痙縮薬(筋弛緩剤):末梢性と中枢性があります。薬物療法については主治医の先生とよく相談して、症状に合った薬物を選択することが重要です。また、異常筋緊張亢進時には座薬などを使用することもあります。

3.ボツリヌス療法・外科的療法

 近年、従来の筋解離術、神経ブロックに加えてボツリヌス菌毒素の筋肉内注射、バクロフェン髄注療法、機能的脊髄後根離断術なども実施されるようになってきています。

 筋緊張異常(特に筋緊張亢進)は重症心身障害においては基盤をなす障害であり、日常生活、心理的要因、二次的合併症など広範な因子や問題と密接に関連しています。そのため、内科的療法を含めて広範囲でかつ多職種からのアプローチが必要です。

(長岡療育園 小西 徹)


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