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Q26: 乳児の頭の大きさや形について

Q26-1生後4ヵ月のこどもです。保健所で頭の大きさが大きいと指摘され、検査を勧められました。頭が大きいとよくないのでしょうか?

A: 頭の大きさは頭囲の値を目安にします。頭囲は頭の周囲の長さで、おでこの一番出ている部分と後頭部の一番出ている部分とを通るようにメジャーで測ります。標準となる頭囲の成長曲線は母子手帳に載っています。頭の大きさは脳の成長に伴って大きくなります。脳の成長は1、2歳までが盛んなため、頭囲の増加もこの期間に大きく、頭囲曲線では1ヵ月ごとに細かく目盛りがあります。
 丸い頭の形はいくつかの骨からできており、この骨は頭蓋縫合でつながり、成長とともに骨同士が硬く結びつくようになります。脳の成長が盛んな1,2歳までの時期は頭蓋縫合がまだやわらかいので、脳が圧迫されて頭の骨の中の圧力が高くなる病気が発生すれば、頭蓋縫合の部分が広がって頭囲がより大きくなります。そのため、赤ちゃんの頭囲が標準の上限に近づいたり上限以上に大きければ、このような脳の病気を疑って診察を行い、必要であればCTやMRIによる脳の検査をします。
 ご両親のどちらかの頭が子どものときから大きいと赤ちゃんの頭囲は病気でなくても大きくなりますし、健康な赤ちゃんでも生後1、2年は一時的に脳の液が脳の表面に貯まりやすい時期がありますので、頭囲が大きいからといってかならずしも病気とはいえません。また、頭囲の変化で病気がすべてわかるわけではなく、頭囲に変化を起こさない脳の病気もたくさんあります。

 頭囲が標準より大きくなる病気としては、脳の内部の部屋に髄液がたまる水頭症、脳の表面に髄液や病気の液がたまる硬膜下水腫、転んで頭をぶつけたり、誤って転落するなど頭の外傷のため頭の骨の中に出血した硬膜下血腫、頭の中に「ふくろ」状に液がたまるくも膜嚢胞、脳腫瘍、ソトス症候群などいろいろな病気があります。脳の検査を行って病気が見つかれば速やかな治療が必要となりますが、病気が見つかっても軽ければ経過を観察します。

 頭囲が標準の範囲にあっても最近の2,3ヵ月で急に頭囲の値が大きくなっている場合は早めに受診してください。発熱や風邪症状がないに、この頃元気がない、よく寝る、繰り返し噴水のように嘔吐する、ひきつけを起こす、大泉門が張っている、できていたことができなくなる、など症状を伴っていれば、治療を急ぐ病気が疑われますので急いで受診してください。

Q26-2 生後7ヵ月のこどもです。他のこどもさんの頭はほぼ丸いのに、この子の頭は歪んでいるように思います。大丈夫でしょうか?

A 頭の丸い形はいくつかの骨がつながってでき、骨同士のつながる部分を頭蓋縫合と呼びます。頭の骨はこの部分を中心に成長し、脳の発育に伴って頭の骨が丸く大きくなります。頭蓋骨縫合早期癒合症という頭の骨の病気では頭がいびつになります。この病気の原因は明らかではありませんが、生まれる前から頭蓋縫合での骨の成長が悪いため頭がいびつに変形し、生まれて後も成長とともにそれが進行していきます。病気による頭の変形には、

1)横から見るとおでこや後頭部が飛び出し、前から見ると頭の左右の幅が狭い
2)横から見ると頭は前後に短く、前から見るとおでこは前にでっぱらず平らである
3)頭を上からみると丸いはずのおでこが船のへさきのように中央部が前にとび出して角ばる
4)頭を上からみると片方のおでこが出っぱり反対のおでこが平らで、おでこが平らになったほうの眼が開きにくい
5)後頭部が平らである
6)頭全体が小さく横からみれば頭の上のほうが尖っている

などがあります。しかし、頭の変形がすべて病気とはいえず、特に5)の変形は寝ぐせによることが多く、座ったり立ったりして横になっている時間が短くなれば変形はよくなります。この病気はまれで頭の形を見ただけでは診断が難しいため、頭の骨のX線検査やCTを行ってこの病気かどうか診断しますが、変形が軽いと診断が難しい例があります。
 頭の骨が十分に成長せず変形が進めば、成長していく脳が狭い頭の骨の中に押し込められて脳の発育が妨げられ発達が遅れることがあります。2)と6)の頭の変形は頭の骨全体が小さく脳に影響がでやすいとされています。また、他の変形でも頭や顔の変形が進行すればいじめの原因になったりします。
 変形の程度が軽いと治療は必要ありませんが、程度が強いと頭の骨を広げ頭の形を正常に近づける手術が必要となります。病気の縫合の部分を取り除く手術やヘルメットを頭につけて形を良くする方法がありますが、限られた例には有効です。脳の圧迫が長く続いて脳の発達が遅れれば、手術を行っても回復しにくいため、生まれてから数ヵ月から1歳頃の赤ちゃんの時期に手術が必要で、多くの場合手術に輸血が必要で、頭の変形を直すのは難しいため手術によって形が正常になると期待しすぎないように、とご家族に説明します。
 また、手術は病気の根本的な原因を治すことにはなりませんので、成長とともに再手術が必要となる場合があり、手術がうまくいっても原因は明らかではありませんが、発達が遅れる例があります。

 頭の骨に加え上顎の骨の発育も悪い例があります。上顎の骨で作られる鼻やのどの呼吸する空気の通路が狭いため、いびきや喘鳴が強い、息つぎできずに休み休みミルクを飲む、中耳炎にかかりやすいなどの症状がでますので、重症の場合は窒息しないように出生後早期に処置が必要になります。また、上顎の骨と前頭部の骨の発育が悪いと、眼が出でまぶたが閉じにくくなります。
 さらに、手足の指同士が癒合したり、親指の先が曲がったり、指や肘が曲げ伸ばしできないことがあります。このような頭以外の骨の発育が悪い病気を合併していれば、頭の骨の変形は強く、脳の病気を合併している例もあるため治療が難しくなります。
 このような病気の原因は、ヒトの体を作る設計図にあたる遺伝子の一部が変化しているためであることがわかってきましたが、ご両親がこの病気でなくてもこの病気をもった赤ちゃんがうまれることが少なくありません。

(大阪市立総合医療センター小児医療センター 小児脳神経外科 坂本博昭)


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