日本小児神経学会
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Q21:子供のてんかんに対して手術で治す方法があると聞きましたが、
    どのようなものか教えてください。

A:薬では発作が止まらない難治てんかんが約20%あり、手術を考えます。

1.てんかんの手術の目的
 難治性の発作を止めることですが、発達の遅れの軽減や防止、転倒によるけがの防止を目指す場合もあります。

2.どんな場合に手術を考えるか
1)頭部MRI検査で限局した異常がある場合
 限局性の皮質脳形成異常、異所性灰白質、腫瘍、局在性破壊性病変、瘢痕、血管病変、海馬硬化や海馬萎縮などがあれば、薬では止まらないので早めに手術を考えます。特に、片側巨脳症に大田原症候群やウエスト症候群(点頭てんかん)などの難治てんかんを伴うものや、皮質形成異常があり乳児期早期発症で発作が頻発するものは薬物療法で発作が軽減することはなく、発達も極めて悪くなるので、早期に手術を考えます。
2)MRIで限局した異常がない場合
 部分発作であって、発作が週1回以上、または知的退行、性格変化、行動異常が出現した場合、あるいは発作は月1回程度でもけがを伴う危険な転倒発作がある場合も手術を考慮します。その発作に適切と思われる主な薬を3種類以上使用し、2〜3年以上たっても発作を抑制できなければ手術を考慮するという考えもあります。
 全般発作あるいは焦点が推測されないてんかんでも、けいれんが持続することで発達を大きく妨げると考えられるもの(ACTH療法が無効なウエスト症候群、転倒発作や発作がほぼ毎日あるレンノックス・ガストー症候群など)や、脱力転倒発作などけがをしやすいものも手術を考えます。
3)手術の適応外となるもの
 明らかな良性てんかん(中心側頭部に棘波を持つ良性小児てんかん、小児欠神てんかんなど)は薬で止まり、発達遅滞も生じないので、手術は考えられません。一方、難治でも、乳児重症ミオクロニーてんかんなど遺伝子異常によるてんかん、進行性疾患に伴うてんかんは適応外です。結節性硬化症に伴うてんかんのように発作焦点が複数ある場合も通常手術適応はありません。ただし、脳梁離断は考えられます。

3.手術適応を決めるための検査
 手術の適応、可能性、方法と範囲を判断するために検査を行いますが、1) 発作間歇期脳波(通常脳波)、2) 長時間脳波ビデオモニタリング(発作時脳波)、3) MRI、4) 神経心理検査(脳の各部位の機能異常と言語の優位半球を同定。乳幼児では手術前後の発達検査)が必須です。MRIで見えないてんかんの焦点の検出には、5) SPECT(脳の血流検査。発作時、非発作時)、6) PET(脳のブドウ糖代謝)、7) 脳磁図(MEG)を行うのが有力です。

4.手術時期
 MRIで脳病変が明らかな場合はてんかん発症からの期間は問わず早期に手術を考えますが、特に乳児期早期発症で発作が頻発するものは早急に手術を行います。それ以外の場合は、十分に検査を行って手術の適応、範囲、方法を検討することが急ぐことより重要です。

5.手術方法
1)半球離断術、機能的半球切除術
 片側巨脳症や巨大な大脳皮質形成異常などに対して行い、病変がある大脳半球の前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉と脳の中心に近い所(基底核)との神経線維の連絡を切断し、脳梁も離断するもっとも大きな手術です。
2)病巣切除術、病巣離断術
 局所的な異常(大脳皮質形成異常、腫瘍、頭部外傷後など)によるてんかんの焦点を切り取るか、切れ目を入れて神経のつながりを断つ方法です。
3)脳梁離断術
 MRIやPET、SPECTでも局在性の異常が見つからないが難治で発達や日常生活を妨げるか転倒する危険な発作(ウエスト症候群やレンノックス・ガストー症候群など)に対し、左右の大脳半球を結合している脳梁を取り除く方法で、発作波が一気に脳全体に広がることを防ぎます。発作焦点が決められない場合に発作焦点を明らかにするために行う場合もあります。
4)軟膜下多切術(MST)
 運動や言語など重要な働きがあって切除できない部分に対し、脳表の直下にマス目状に浅い切れ目を入れ、発作波が広がるのを防ぎます。

6.発作予後
 病巣が確定している場合の病巣切除や半球離断では発作が止まる率が高いのですが(60〜80%)、MRIで異常がない場合は止まる率は低くなります。脳梁離断では発作は止まらないことが多いのですが、転倒など危険な発作が90%は抑制され、ボーとすることも減ります。また、術前に薬物療法で止まらなかった発作が、術後には薬物療法で止まることもあります。

7.発達予後
 通常は発作が止まれば発達面は改善が見られ、発達年齢は上昇します。ただし、時とともに実際の年齢も上がるため、IQは必ずしも上がるとは限りません。切除手術や半球離断などでは発作が止まることが多く、発達の改善が期待できます。脳梁離断では発作は止まらないものの、急に倒れることやボーとすることがなくなるので、生活の質が改善します。

(国立精神・神経センター病院小児神経科 須貝研司)


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