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Q20:注意欠陥/多動性障害(AD/HD)とはどんな疾患ですか?治療にはどのようなものがありますか?

1:疾患の考え方(概念)

 こどもたちは幼児期には活発であることが当然であり、様々な経験から成長とともに次第に自分をコントロールできるようになっていきますが、年齢不相応に自分をコントロールできずに、落ち着きがなかったり、物事に集中できる時間が短い、忘れ物が多い、衝動的な行動をとるなどの問題行動がみとめられるこどもがいます。このような中に注意欠陥/多動性障害(Attention Deficit / Hyperactivity Disorder;AD/HD)のこどもが存在します。AD/HDとは,年齢あるいは発達に不釣合いな注意力、および・または衝動性や多動性の問題のために社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもので、7歳以前にその特徴が現れ、その状態が持続すると定義されます。脳の機能の発達・成熟にかたよりが生じた結果と考えられていますが、その原因はまだ確定していません。親子で似ていたり(遺伝性素因)、胎生・出産時のトラブルや環境要因などが複雑に関係して症状が現れると考えられています。

 AD/HDの症状を示すこどもについては1902年に英国のStillが報告し、その後、微細脳機能不全、多動症など医学的な名称の変遷を経て、1994年に米国精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(DSM-IV)」で、現在のAD/HDの診断基準が作られ、その特徴により不注意優勢型・多動衝動性優位型・混合型に分けられています。本邦におけるAD/HDの概念に相当するこどもは2003年の文部科学省の調査で約3%存在するとされ、これは世界的にもほぼ同じ値で、男児が女児の約3〜5倍とされています。診断には関連・類似するその他の発達に関わる疾患を除外しつつ、2つ以上の状況(自宅と学校など)において症状が存在することなど、こどもの発達を見守りつつ診断します。

 AD/HDのこどもたちは不注意、多動性、衝動性などの中核となる症状以外にも、その特徴を理解されないまま不適切な状況・対応が続くと、怒りっぽくなったり、反抗的な態度や攻撃的な行動を取るなど周囲との関わりがうまくいかなくなったり、学習に遅れが見られたり、叱られ続けることなどで自尊心・自己評価が低くなるなど二次的な問題が生じる可能性があります。AD/HDの診断と治療が早期に適切に行われるほど予後が良いというのはこのためです。

2:治療

 治療の基本はAD/HDのこどもたちが自分の特徴を理解し、状況にあった適切な行動が取れるようになることです。そのためには心理社会的治療と薬物療法が2本の柱となります。薬物療法はAD/HDのこどもが自分自身をコントロールできるように手助けをするために用いると考えてください。「自分はやればできる」という自尊感情・自己評価(セルフエスティーム)の向上につながり、最終的には薬物の力を借りなくても自分で行動をコントロールできるようになることが目標です。

(1) 心理社会的治療の主な考え方

1) 環境調整:こどもに関わる保護者や教師など、関係者がその特徴を理解し、こどもが自分のとるべき行動を理解しやすいような対応ができるようにしていきます。
2) ペアレントトレーニング:保護者がこどもの望ましい行動を増やし、望ましくない行動を減らすための接し方や方法を学ぶことです。
3) ソーシャルスキルトレーニング:こどもたちが状況に応じた適切な行動が取れるように社会のマナーやルールを学び、対人関係を良好に保つことを学ぶことです。状況を具体的にわかりやすく提示し、達成する喜びなどを得る方法として行動療法などが実施されています。

(2) 薬物療法

1) 塩酸メチルフェニデート徐放剤:中枢神経を刺激して、脳内の神経伝達物質(ドパミン、ノルアドレナリン)の調節をすることで行動の問題が改善されます。朝1回の服用で有効率は約70%と効果の高い薬剤として評価されています。中枢神経刺激薬であり、発達期のこどもに使用する薬であるため、日本では平成19年10月に小児AD/HD適応が承認される際に、厳密に使用する目的で「適正流通管理委員会」が定められ遵守されています。
2) アトモキセチン:ノルアドレナリン系に作用し、注意及び衝動制御の調節作用が得られる薬剤で、中枢神経刺激作用はなく依存の問題がないとされる薬剤ですが、効果発現まで治療開始後4〜6週間という時間がかかります。平成21年春に承認予定です。
3) その他症状に応じて抗うつ薬、気分安定薬、向精神薬などが使用される場合があります。

(東京医科大学病院小児科 宮島 祐)


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