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Q18:発達障害者支援法ができましたが、その理念と運用の状況・問題点などについて教えてください

 戦後、身体障害や知的障害を持つ人を支援する様々な法律が制定されてきました。1949年には身体障害者福祉法が戦争で傷ついた傷痍者を救済する法律として制定されたのを皮切りに、1970年には心身障害者福祉法、1993年に現在の障害者支援体制の基本である、障害者基本法が成立しました。2004年に、障害者基本法が改定され、都道府県およびに市町村が障害者支援のための施策を制定することが義務付けられました。発達障害者支援法は同じく2004年に施行された、発達障害児(者)の早期発見、教育と就労を支援を目的とした法律です。
 これまでの障害者支援の法律と発達障害者基本法の大きな違いは、その対象者がこれまでの法律では障害者とみなされてこなかった、注意欠陥多動性障害、学習障害、高機能自閉症、アスペルガー症候群などの、知的障害や身体障害を伴わない障害を持つ子どもや成人が対象であるということです。これらの発達障害は、従来の障害の概念外であったために、支援の対象になっていませんでしたが、家庭、地域、学校、職場で、さまざまな困難を抱えて生きてきました。現在、注意欠陥多動性障害、学習障害、高機能自閉症、アスペルガー症候群は、いずれも成育環境による後天的な障害ではなく、生得的(生まれつき)の障害であることが分かっていますが、近年そうした理解がえられるまでは、生育環境やしつけ、本人の努力不足などによって社会適応の不全状態と考えられてきました。
 しかし、発達障害の本態の理解とともに、生まれつきコミュニケーションや社会適応の困難をきたす障害であることが分かってきたのです。
 発達障害のもう一つの特徴は、その頻度が6%前後と、従来の他の障害に比べて高いことです。従来の障害概念の中の一つである知的障害児(者)の頻度が2%前後であったことを考えると、発達障害者基本法の対象である発達障害児(者)がその3倍の6%前後であることの意味は極めて大きいことです。
 発達障害者基本法では、障害者基本法に準じて、発達障害児(者)の早期発見体制と、学校や職場での支援体制に関わる施策を、都道府県市町村が責任を持って施行することが義務付けられています。発達障害児(者)支援の施策は、医療、保健、福祉、教育、労働のすべての分野において施行する必要があります。本法の実施の中心となるのが「発達障害者支援センター」です。発達障害者支援センターでは、発達障害の早期発見、早期支援、就労支援、発達障害に関する研修を行うとともに、発達障害児(者)にかかわる他領域との調整を行うことが定められています。
 医療、保健分野では、早期発見、診断、治療においての措置を講じることがうたわれています。また、都道府県市町村は、そうした医療、保健サービスを行う病院や診療所を確保することも義務付けられています。3歳児ないしは5歳児健診において、高機能自閉症や注意欠陥多動性障害を早期診断する試みが始まりつつあります。
 教育分野では、本法の成立と歩調を合わせて、発達障害の児童生徒への対応を目的とした校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの設置などを骨子とする「特別支援教育体制推進事業」が2005年度より始まり、幼稚園や学校に在籍する発達障害児への支援を開始しています。
 発達障害者支援法は、発達障害児(者)への支援を、都道府県市町村の義務と位置づけた法律ですが、その理念の実現にはまだ問題があります。
 第一に本法は理念を定めた法律であり、その履行に関しての罰則等はありません。また、施行されてからの年限がまだ短く、多くの都道府県市町村では、その実行に必要な予算や専門的な人員の確保に苦労しているのが実情です。発達障害という概念の社会的認知も、近年急速に進んできていますが、まだ不十分です。また、小児神経科医など、発達障害を診療する専門家の社会的認知も進んでいません。本学会でも、発達障害に関する専門家向けのセミナーの開催や、発達障害の診療医師のHP上での公表など、発達障害者基本法の趣旨にそった活動を推進しています。

(お茶の水女子大学チャイルドケアアンドエデュケーション講座 榊原洋一)


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