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Q14:チックのこと、チックの治療について教えてください。

A:まずは、どんな状態をチックというかお話しましょう。チックは、突発的で、不規則な、体の一部の速い動きや発声を繰返す状態です。いろいろなチックがあります。まずは、運動性チックと音声チックに分けられ、それぞれに単純性、複雑性といわれるものがあります。単純性運動性チックは瞬き、首振り、顔しかめなど、複雑性運動性チックは物にさわる、物をける、飛び上がるなどで、単純性音声チックは発声、咳払い、鼻鳴らしなど、複雑性音声チックは汚言(人前や社会的な場で、言うことがはばかられるような汚い言葉をいってしまう。)反響言語(人の言ったことを繰返してしまう。)などです。
 一見、乱暴と思われる行動や非常識と感じられる言動が、チックの症状である可能性もあるのです。

 治療が必要となるチック障害は、チックにより社会的、職業的、または、ほかの重要な領域での機能の著しい障害がひきおこされるというほどのチックのことをいいます。逆に生活にそれほどの支障を来たさないチックは障害とはいわず、治療の対象にはなりません。また、チック障害は、症状の持続が4週間以上12カ月未満の一過性チック障害、12カ月以上持続し、3カ月以上持続してチックが消失することがない慢性チック障害、同様の持続期間でかつ多彩な運動チックと一つまたはそれ以上の音声チックがあるトゥーレット障害に分類されています。

 治療や対応を考えるとき、どんな機序でそれが発生するかを知る必要があります。チックの発現には、脳の大脳基底核・視床・皮質回路の異常、線条体におけるドパミン活性の低下とそれに続発したドパミンD2受容体の過感受性が関与するといわれ、その基盤には遺伝素因があると推測されます。また、発達過程でドパミン活性が低下すると前述の回路の他、前頭葉の機能的および形態的発達も障害され、情緒や知的行動の問題を引き起こす要因となるともいわれます。ドパミン神経は環境の影響は受けませんが、大脳基底核・視床・皮質回路には環境の影響を受けるセロトニン神経も入ってきており、チックにはセロトニン活性低下とそれを引き起こす環境要因も影響します1)。なお、ドパミン、セロトニンは行動や情緒面に影響を及ぼす脳の代表的な神経伝達物質です。 

 また、チックは、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、広汎性発達障害、学習障害に合併していることが少なくありません。トゥーレット障害では40%程度にAD/HDを合併するといわれます。トゥーレット障害では強迫性障害も合併しやすく、しばしば学童期後半から思春期で、チックが軽減するころから認められるようになります。これらの合併する障害は、チックより日常生活に影響を及ぼしていることが多く、その理解と治療により、日常生活の支障やストレスが軽減し、チックが改善することもあります。(強迫性障害とは、ちがうとわかっていても止められない思考(いつもあることをしないと災いが起こるような気がする、悪いことをしてしまうのではないか、してしまったのではないかと毎日のように思ってしまう、など。)、不合理とわかっていても止められない行為(何かに触れると手を洗わないと気がすまない、カギをかけたか何回も何回も確認しないといられない、など)で日常生活に支障をきたす状態を言います)

 治療の実際についてお話します。多くのチック障害は一年以内に消失する一過性チック障害で、環境調整で軽減、消失することも少なくありません2)。ただし多彩な運動性チック、頻回の音声チックが続き、学習や日常生活に著しい支障を来たすようであれば、薬物療法を行います。薬物療法は前述したドパミン活性低下によるドパミン受容体の過感受性およびセロトニン活性低下への対応が中心とります。前者には通常ドパミン受容体遮断薬のハロペリドール、ピモジドがよく使用されていますが、小児期では、ドパミンは、脳とくに前頭葉の発達に重要な役割をはたすことから、できるだけ使用をさけたいものです。使用する場合は、出来るだけ少量を用い、過鎮静に注意を払います。ドパミン受容体遮断薬のうち、前頭葉のドパミン機能低下が少ないといわれるリスペリドンは比較的安全に使用できると思われます。筆者は、小児の場合、ドパミン受容体遮断薬使用の前にドパミン活性の低下を配慮し、少量のl-dopaを試みることが多いです。塩酸クロニジンも推奨されています3)。強迫性障害が並存している場合、あるいは強迫性が基盤にあるような複雑チックでは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やイミプラミンを使用します。その他、クロナゼパム、カルバマゼピン、クロルジアゼポキサイドなどでも効果をみる例があります。

((社)発達協会王子クリニック 石崎 朝世)

参考文献

1)瀬川昌也. Gilles de la Tourette 症候群.小児内科2003;35:833-40.
2)星加明徳,三輪あつみ,中島周子,ら.チック症.小児科診療2000;63;1539-45.
3)Ozonoff S, Stayer DL, McMahon WM, et al. Inhibitory deficits in Tourette syndrome: a function of comorbidity and symptom severity. J Child Pssychol Psychiatry 1998;39;1109-18.


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