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Q13:筋ジストロフィーのステロイド治療について教えてください

A:これまでデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下DMD)の筋力を改善する薬は歴史的に見ても存在しませんでした。しかし、副腎皮質ホルモン(プレドニゾン、プレドニゾロン)が有効なことが1980年代に明らかとなり、現在では世界中で使われています。しかし、標準的な使用法は確立されていないので、今回のご質問が出てくるのは当然のことです。
 2005年には米国の神経学会からデュシェンヌ型筋ジストロフィーの副腎皮質ホルモン治療という題名の論文が提出されており、これがステロイド治療のガイドラインとしては最初の報告です。

 この論文の内容は;

  1. プレドニゾン0.75mg/kg/日が第一に推奨される。
  2. 副作用を注意深くモニターする必要がある。体重が余り増えてくるなら0.5mg/kg/日に減量し、3〜4ヶ月でさらに0.3mg/kg/日へと減量する。

 この2つの推奨点のエビデンスレベルはいずれもAである。

  しかし、いつ始めるか、中止するかなどの点については触れていません。2007年ヨーロッパ神経筋センターの国際ワークショップでは、現在プレドニゾン0.75mg/kg/日の投与は国際的には副作用の心配から少量で行われる例が多く標準化した治療法の確立が必要と結論しています。このワークショップでは0.75mg/kg/日の連日投与と0.75mg/kg/日を10日間連続投与し、その後の10日間のオフを挟む方法を比較しようと提案しています。ここでは4歳から7歳のDMD児を対象とするとしているので、開始の年齢は、この頃が一般的と考えるのがよいと思われます。筆者は筋力低下が著明となる5〜6歳から開始しています。いつ中止するかについては、ワークショップの考え方ではずっと続けるとしているように読めます。筆者は最初は歩行可能期間のみと考えておりましたが、歩行機能を喪失しても這う事のできる期間も家族からの希望が出る場合があり、長期に続ける場合もありました。従っていつ中止するかという事についての結論はありません。
 副作用の点では体重増加が一番多く報告されており、筆者の経験でも体重増加が悩みの種となります。次にあげられるのが骨粗鬆症です。食事でカルシウムやビタミンDを補給する必要性が叫ばれています。筆者は0.75mg/kg/日を月に10日間投与し、後20日間休薬という方法をとっていますので、他のステロイドの大きな副作用、たとえば糖尿病などを経験したことはありません。
 DMDでは筋力スコアが対照群で6ヶ月間に4.8%低下するのに対してプレドニゾン0.75mg/kg/日投与群では6.7%増加するというデータが出ており、エビデンスレベルは低いのですがDMDの歩行が約2年延長する(2mg/kg/日という大量投与で)という報告もあります。びっくりするほど筋力が向上する症例もあり、是非試すべき治療法と考えています。ベッカー型筋ジストロフィーにも有効です。
 いかなるメカニズムでDMDにステロイドが有効なのかについては未だ不明なのです。考えられているのは
 1)構造蛋白、免疫反応などにかかわるMRNAのレベルを変える
 2)cytotoxic Tリンパ球を抑制する
 3)細胞内へのCaイオンの流入を抑制する
 4)ラミニンという膜タンパク質を増加することにより細胞修復が起こる
 等々の説があります。

(独立行政法人国立病院機構箱根病院 石原 傳幸)

参考文献

1)Moxley RT 3rd ら:Practice parameter: corticosteroid treatment of Duchenne dystrophy: report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology and the Practice Committee of the Child Neurology Society  Neurology 2005 11;64:13-20.

2)Bushby Kら:145th ENMC International Workshop: planning for an International Trial of Steroid Dosage Regimes in DMD (FOR DMD), 22-24th October 2006, Naarden, The Netherlands. Neuromuscul Disord 2007 May;17:423-8.


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