日本小児神経学会
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平成23年6月22日

厚生労働大臣 
細川 律夫 殿

一般社団法人 日本神経学会   

代表理事 水澤 英洋

一般社団法人 日本小児神経学会
理事長  大澤 真木子

要望書

神経心理師資格の新制に関する要望

 昨今の高齢化に伴い、認知症患者数は増加の一途にありますが、その適切な診断および治療、ケアは社会的にも医療経済的にも重要な意味をもちます。また、小児を含め精神疾患も増加傾向にあり、自殺者数の多さも指摘されており、その対応は社会問題になっています。このような状況のなかでは、医師のみの対応では不十分で、心理士をはじめとしたチーム医療の果たす役割は多大です。しかし、これまで心理士は医療職としての国家資格をもたないため、特に公立病院での正規職員としての雇用は困難を極めているのが現状です。現在の臨床心理士がすべて医療に従事しているわけではないため、医療における心理士の立場を確保するために、新たに「神経心理師(仮称)」資格を制定し、医療職として認定していただくように要望するものであります。

 以下に本要望をするにいたった経緯につきご説明いたします。

歴史的経過

 これまでの歴史的な関係から、心理学と医学の間には重要な関連性があり、医療において心理学的知識と能力を必要とすることは、自明のことであります。米国などでは、医療心理士が専門職として医師と同等の発言力をもって、患者の診断に関わっている現状を鑑みるに、日本においても医療現場での心理士の果たす役割に大きな期待が寄せられています。しかし、これまでの歴史的経過より必ずしもその重要性を発揮できる環境にありません。

 2008年、日本学術会議の心理学・教育学委員会健康・医療と心理学分科会から、「医療領域に従事する『職能心理士(医療心理)』の国家資格法制の確立を」という提言が出され、医療における心理士の重要性が提言されました。その後、医療分野では、日本神経学会を中心としたアルツハイマー病の診断において、心理学的検査の必要性から心理士の病院内での職能の必要性が認識され、日本小児神経学会では、心理学的分析、さまざまな心理療法に加え、発達障害などの児に対し客観的診断のための心理テストの重要性が認識されており、両学会とも、早急に職能としての心理士の地位を医療の中で確立することが必要であるという結論に至っています。とりわけ、臨床心理査定に含まれている心理テストによる、心的障害程度の専門的評価が、臨床上必要欠くべからざる要素であることが、医療と心理学関係者の共通認識となるに至りました。

神経心理師の重要性

 いわゆる「臨床心理士」は、1988年に設立された日本臨床心理士資格認定協会により、現在までに約2万人が認定されています。2005年からは、専門職大学院としてもその認定が行われています。現在、臨床心理士になるには、日本臨床心理士資格認定協会指定大学院の臨床心理学系専攻・領域の修士課程を修了する事が基本的な要件であり、その後、一次・二次両試験に合格した後、臨床心理士と称することができるもので、臨床医学関係の専門医・認定医の意味合いと似ています。しかし、大きな違いは前にも述べたごとく、医療職ではなく、臨床心理士が正規雇用の職員として病院内で働くための職種が得られておりません。

 Alzheimer’s disease neuroimaging initiative (ADNI)が、米国NIHによって2004年から開始され、アルツハイマー病の治療薬剤開発のための、治験を行う時のバイオマーカーを検索するプロジェクトとなり、現在、日本を始め多くの国でデータの収集が行われています。ここで、もっとも重要なことは、心理テストによって、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、などの臨床診断を行うことがすべての基本になるもので、この診断が間違っていると、バイオマーカーの探索も意味をなしません。近年のいくつかのアルツハイマー病治療薬の治験においても、その診断や認知機能の評価において、心理テストが重要ではあるが、その結果が一定していないということで、薬剤の認可までに長い時間がかかってきました。これらは、心理士の不慣れが大きな原因で、製薬会社の講習会も何度となく開催されています。これから、さらに進んだ治療薬の治験を行うにあたって、心理士の占める役割は大きいと考えます。また、治験だけではなく、物忘れ外来など、認知症を取り扱う臨床分野、うつ病や神経症を扱う精神科でもその診断に心理テストのデータは重要な意義を持ちます。

小児神経学会領域では、医療の中で心理士の担う役割は非常に幅広く、発達障害児の発達査定、不安などを抱える不登校児の心理検査、さらに様々な心理療法などが行われています。発達障害者支援法(平成16年12月10日法律第167号)により、発達障害の早期発見、早期支援を国及び地方公共団体の責務とすることが明らかとなり、学校教育における発達障害児・者への支援、就労支援などが求められるようになりました。これに伴って、発達障害の診断と療育の多くを小児神経科医は行うこととなり、学校教育と連携し発達障害児・者の自立及び社会参加のための支援が重要な職務となっています。発達障害には、自閉症、アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などが含まれ、患者の客観的診断は、発達神経学の専門的基礎知識を有する心理士の行う発達検査なしには不可能であります。小児神経学会において策定された小児神経学の講義を受け、医療職として認定された神経心理師が誕生すれば、小児神経領域でのニーズは以上のように非常に大きく、病院で正規雇用され活躍するものと期待されます。

 現在の医療では、さまざまな面に心理学的分析・カウンセリングが必要になりつつあります。たとえば、脳卒中で入院してきた患者は、高血圧、糖尿病、高脂血症などさまざまな生活習慣病があり、かつ日常生活動作の障害を生じています。そのため、心は落ち込み、疾患を治す努力や麻痺などのリハビリテーションにおいて、心理学的なサポートが必要です。また、多くの疾患で遺伝子の異常が明らかになっています。遺伝子診断においては、優性遺伝疾患の多くの患者、その家族は、遺伝していないことを期待して検査しますが、遺伝子が陽性であることは多く、そのこころのケアも重要です。その他、様々な医療の分野で、心理士に期待される役割は大きいと考えます。

神経心理師の医療職としての意義

 約2万人いる臨床心理士がすべて、神経心理師になるという意味ではありません。保険診療で認められている検査では、「認知機能検査その他の心理検査」が、神経心理テストにあたりますが、ごく一部の検査以外は、実施者が限られておりません。しかし、複雑な神経心理テストにつきましては、先に述べましたように、基礎知識のない不慣れなものが検査を行うと、結果が一定しない恐れもあります。したがって、一定の知識と技術があると認定された心理士を神経心理師とし、複雑な神経心理テストを行えるようにすることが望ましいと考えます。現在、臨床心理士は、医療職ではないため、公立病院では正規職員として雇用できない、その他の医療機関でも採用しにくい、という問題点があります。この機会に、医療職として、心理テストが行える神経心理師を認めていただけるよう要望するものであります。


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