日本小児神経学会
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平成19年11月21日

厚生労働省医薬食品局審査管理課
中垣 俊郎 課長 殿 

日本てんかん学会 
理事長 田中 達也
日本小児神経学会 
理事長 三池 輝久

タクロリムスのラスムッセン症候群への適応拡大についてのお願い

 ラスムッセン症候群は、感染症をきっかけに難治なてんかんが発病し、片麻痺・精神発達遅滞・高次脳機能障害が起こる予後不良の自己免疫性中枢神経疾患です。てんかん発作はきわめて治療に抵抗性で、バルビタール麻酔療法をしながら脳外科的手術を待つ、あるいはそのまま命を落とされることもあります。非優位半球障害例では機能的半球切除術が行われますが、術後の片麻痺が必発です。優位半球障害例では手術が行えず、ステロイドパルス療法・免疫グロブリン治療などが行われますが、予後は不良です。
 本症は、1994年ScienceのRogersらの論文(文献1)をきっかけに自己免疫性てんかんであることが知られ、その後、細胞性自己免疫とくに細胞障害性T細胞の関与がBienらを中心にしたドイツのグループから明らかにされてきました(文献2)。そして、彼らは、活性化T細胞の抑制を主作用とするタクロリムス(プログラフ)の有用性を2004年Neurologyに報告しました(文献3)。
 本邦でも高橋らがグルタミン酸受容体に対する自己抗体測定法を確立し(文献4、5)、多くの日本の症例の診断に寄与して参りました。しかし、ラスムッセン症候群への有効な保険適応治療が見出せず、文献にあるタクロリムス(プログラフ)の使用を検討するにいたりました。本来、新たな適応症は、治験が行われて有用性安全性を確認後、保険収載され、認められるものですが、日本の製薬メーカーによると、国内でのラスムッセン症候群症例数が少ないため、治験の予定はまったくないとの返事でした。
 そこで高橋らは、2004年、やむを得ず院内の倫理委員会の承認を得た後、5名の患者にタクロリムスを投与したところ、有害事象はなく、ほとんどの症例で有効性を示し、病勢の進行を食い止めていると述べております。ちなみに東京女子医科大学小児科の武藤らは2004〜2005年に全国の難治性てんかんを治療している137施設にアンケート調査し、ラスムッセン症候群の25症例を見出しました。いずれの症例も進行性で激烈な発作症状のために治療に苦慮し、15例でてんかん外科手術が施行され、中でも6例は大脳半球切除術が施行されています。治療法としては免疫学的治療法、特にγ-グロブリン大量療法やタクロリムスを試みる価値があると結論しています。(文献6)
 以上のように、進行性の自己免疫性中枢神経疾患ラスムッセン症候群は、非常に稀な疾患で症例数が少ないため治験は困難でありますが,タクロリムス治療のラスムッセン症候群への適応拡大を、何卒お認めいただきますようお願いいたします。

文献

  1. Rogers SW, Andrews PI, Gahring LC, et al. Autoantibodies to glutamate receptor GluR3 in Rasmussen’s encephalitis. Science 1994; 265: 648-651.
  2. Bien CG, Bauer J, Deckwerth TL, et al. Destruction of neurons by cytotoxic T cells: A new pathogenic mechanism in Rasmussen’s encephalitis. Ann Neurol 2002; 51: 311-318.
  3. Bien CG, Gleissner U, Sassen R, et al. An open study of tacrolimus therapy in Rasmussen encephalitis. Neurology 2004; 62: 2106−2109.
  4. Takahashi Y, Mori H, Mishina M, et al. Autoantibodies to NMDA receptor in patients with chronic forms of epilepsia partialis continua. Neurology 2003; 61: 891-896.
  5. Takahashi Y, Mori H, Mishina M, et al. Autoantibodies and cell-mediated autoimmunity to NMDA-type GluRε2 in patients with Rasmussen’s encephalitis and chronic progressive epilepsia partialis continua. Epilepsia 2005; 46 Suppl 5: 152-158.
  6. 武藤順子、高橋幸利、白坂幸義、沢石由記夫、矢野珠巨、星田 徹、小坂 仁、中洲 敏、赤坂紀幸、須貝研司、宮本晶恵、高橋 悟、小国弘量、大澤真木子. Rasmussen脳炎( Rasmussen症候群)の臨床経過と治療について.てんかん学会ワークショップ てんかんと免疫  第40回てんかん学会 金沢 2006.

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