日本小児神経学会
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「小児神経学的検査チャート作成の手引き」

J.はじめに

 「小児神経学的検査」が診療報酬の対象として認められた。平成20年度診療報酬改定により、意識状態、言語、脳神経、運動系、感覚系、反射、協調運動、髄膜刺激症状、起立歩行等に関する総合的な検査および診断を、成人においては「別紙様式19」の神経学的検査チャートを用いて行った場合に算定できることが認められたのに続き、平成22年度診療報酬改定により小児においては総合的な検査および診断を「別紙様式19の2」の小児神経学的検査チャートを用いて行った場合に算定できることが認められた。
 小児の神経学的検査の記載は「別紙様式19の2」に準じて行うが、日本小児神経学会として、検査の行い方の基準を明確にし、その記載法を標準化する目的で、以下にチャート作成の手引きを示す。

K.記載に際しての留意事項

 診療報酬の算定にあたっては神経学的検査チャートのすべての項目について検査を行い、その所見を記載することが原則である。しかし、患者の状態によっては、例えば、意識障害のため検査不能な項目があった場合など、検査ができなかった理由(「意識障害のため測定不能」など)を余白もしくは3頁目の「神経学的所見のまとめ」に記載する必要がある。
 また、神経学的検査は専ら神経系疾患(小児を対象とする場合も含む。)の診療を担当する医師(専ら神経系疾患の診療を担当した経験を10年以上有するものに限る。)が当該検査を行った上で、その結果を患者およびその家族に説明した場合に算定できる。その説明した内容を付記しておく。
 神経学的検査と一連のものとして実施された検査(例えば、眼底検査した場合の「D255」精密眼底検査などを指す)については、所定点数に含まれ、別に算定することはできない。

L.記載の仕方

1.身体発育
 小児では身長、体重、頭囲の発育評価は重要である。早産児の場合1歳6か月ごろまで修正月齢で評価することもある。各月齢の標準身長、体重、頭囲とSDを記載する。

2.発達指数
 遠城寺式乳幼児分析的発達検査やデンバー式発達スクリーニング検査を用いる。

3.精神状態
 a)意識
 意識レベルについては、まず清明か異常かを判断し、異常である場合は、その内容(意識不鮮明、傾眠、混迷、半昏睡、昏睡、せん妄など)を評価する。日本脳神経外科学会(1976年)では、(1)自力移動が不可能である、(2)自力摂食が不可能である、(3)糞・尿失禁がある、(4)声を出しても意味のある発語が全く不可能である、(5)簡単な命令には辛うじて応じることも出来るが、ほとんど意思疎通は不可能である、(6)眼球は動いていても認識することは出来ない、の6項目が3か月以上存在する場合を遷延性意識障害と呼ぶ。しかし、重症心身障害児などで呼びかけに反応しない場合でも、覚醒と睡眠のリズムが保たれている場合は、Japan Coma Scaleで評価するのは好ましくない。
 b)Japan Coma Scale(JCS)による意識障害の分類
   (カッコ:坂本による乳児の意識レベル評価法)
J.刺激しないでも覚醒している状態(1桁で表現)
  (delirium, confusion, senselessness)
 1.だいたい意識清明だが、今ひとつはっきりしない(あやすと笑う、ただし不十分で声を出して
  笑わない)
 2.見当識障害がある(あやしても笑わないが視線はあう)
 3.自分の名前、生年月日が言えない (母親と視線が合わない。)
K.刺激すると覚醒する状態―刺激をやめると眠り込む(2桁で表現)
 (stupor, lethargy, hypersomnia, somnolence, drowsiness)
 10.普通の呼びかけで容易に開眼する
  合目的な運動(例えば、右手を握れ、離せ)をするし、言葉も出るが、間違いが多い(飲み物を
  見せると飲もうとする。あるいは乳首を見せれば欲しがって吸う
 20.大きな声または身体をゆさぶることにより開眼する
  簡単な命令に応じる、例えば、離握手(呼びかけると開眼して目を向ける。)
 30.痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する
L.刺激しても覚醒しない状態(3桁で表現)
 (deep coma, coma, semicoma)
 100.痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする
 200.痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる
 300.痛み刺激に反応しない

Glasgow Coma Scale(GCS)(1977年)による意識障害の分類

スコア

A.開眼(Eyes Open)

自発的に開眼する

E4

呼びかけにより開眼する

3

痛み刺激により開眼する

2

全く開眼しない

1

B.言語(Best Verbal Response)

見当識良好

V5

混乱した会話

4

不適切な言葉

3

理解不能の応答

2

反応なし

1

C.運動(Best Motor Response)

命令に従う

M6

疼痛に適切に反応

5

屈曲逃避

4

異常屈曲反応

3

伸展反応(除脳姿勢)

2

反応なし

1

 意識が清明な場合は以下の検査を引き続き行う。

4.行動

 診察室での行動について特徴的な行動があれば記載する。多動、診察医に無関心、マイペース、視線を合わせない、こだわり、大きな音に過敏など、気がついた行動に○をつける。その他目立つ行動がある場合はカッコ内に記入する。

5.肢位・姿勢・不随意運動

 診察室での肢位・姿勢について記載する。不随意運動がある場合には、その不随意運動の内容と部位について記載する。

6.移動・起立・歩行

 現在可能な主な移動方法について記載する。歩行可能な場合、片足立ち、つぎ足歩行、かかと歩きつま先歩き、仰臥位からの立ち上がりを観察する。
 片足立ちは3歳で3〜6秒、5歳でたいていの小児が10秒前後可能で、7〜8歳で20秒以上可能
になる。6歳以上で片足立ちが出来ないのは異常である。
 直線歩行は5歳以後可能で、7歳以降では足の前に足をきちんとおくつぎ足歩行が可能であることを確かめる。

7.脳神経

 視神経K
 視力 2歳未満では 対光反射・瞬目反射・固視反射・追従運動を利用して評価する
     2〜3歳では森実式ドットカードあるいは動物図形を用いた絵指標を用いて評価する。
     3〜6歳ではランドルト環をひとつだけを印刷したカードを用いる
     6歳以上は通常のランドルト字づまり指標(通常のランドルト視力表)を用いる
 視野 4歳以上では視野の検査は対座法で行う。検査は視野の右上、右下、左上、左下の
     4か所を調べる。乳児〜幼児では視野の外からおもちゃをまわして視線の動きをみる。
 眼底 眼底検査は携帯型の眼底鏡(直像鏡)を用いて、乳頭(うっ血、萎縮など)、網膜
    (色素変性、cherry-red斑、白斑など)の異常の有無を観察する。眼底の焦点を合わ
     せるダイアルの数字によって被験者の屈折異常を推察することも可能である。
    (検者自身の裸眼でのダイアル番号を知っておく)。
 動眼L、滑車M、外転神経O
  固視をさせて眼位の異常を評価し、追視をさせて眼球運動制限の異常を評価する。
滑動追跡性眼球運動の評価は、あごか頭を押さえて目の前に指標をおき、ゆっくり上下左右に動かして評価する。
律動性眼球運動はおもちゃの車などを目の前で走らせるなど急激に指標を動かして評価する。
頭を急速に動かして見る(head thrust)ような児では、眼球運動失行症の可能性があり、律動性眼球運動を注意深くみる。
眼振の記載法は下図を参考にして行う。

瞳孔は瞳孔の大きさ(縮瞳、散瞳、瞳孔不同の有無)、形(正円、不正)を視診する。瞳孔が2mmより小さい時は縮瞳、5mmより大きいのを散瞳とする。
対光反射はペンライトを用い、患者の視線の外側から瞳孔に光をあてる。光をあてた側の瞳孔(直接対光反射)と反対側の瞳孔(間接対光反射)の収縮を観察する。

                             

 三叉神経N

咀嚼については、問診で異常がないかどうか聞く。下顎の運動や下顎の大きさを評価する。
下顎が小さい場合、上顎が高口蓋になっていないか評価する。N神経運動枝の周産期障害は、開口制限、小顎症、高口蓋を示すことがある。

 顔面神経P

顔面神経運動枝は、下部顔面筋では口角や鼻唇溝の左右差で、上部顔面筋の評価は閉眼力で評価する。

 聴神経Q

日常生活での音に対する反応について問診を行い、音の出るおもちゃに対する反応により評価する。

 舌咽R、迷走神経S

2つの神経は嚥下運動や発語に関係している。嚥下障害の有無を問診で確認し、診察では、嗄声や鼻声ではないかを評価する。口を開かせ軟口蓋が左右差なく動くか、口蓋垂が正中にあるかどうかをみる。その後、綿棒か舌圧子で咽頭後壁か扁桃部に触れ、嘔気の誘発による咽頭反射の有無を評価する

 副神経

副神経は胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配する運動神経である。右の胸鎖乳突筋の収縮では、頭を右に傾け、顔は左を向く。上部僧帽筋では、協力が得られれば肩を挙上させて筋力の左右差の評価を行う。

 舌下神経

舌の萎縮の有無、線維束性攣縮(fasciculation)、舌提出による偏位の有無をみる。
Werdnig-Hoffmann病、脳幹の障害された脳性麻痺では、舌の線維束攣縮がみられる。
舌の偏位がみられる時、偏位側が障害側である。

8.感覚

 痛覚は乳児では左右の前腕・下腿などに爪楊枝の先端などで痛覚刺激を加え、逃避反応が起こるかどうかで評価する。
 触覚は3歳児以上で、左右の前腕・下腿などをティッシュペーパーなどで触り、触ったかどうか答えさせる。
 関節覚は母趾を検者が背屈または底屈させどちらに曲げられているか答えさせる。

9.筋力

 乳児では、手足の動かし方、蹴る力、腹臥位での頭部の挙上などの日常生活動作でそれぞれの筋力を評価する。歩行可能な幼児では、歩容、起立姿勢、上肢の挙上、くすぐった時の逃避反応の力などで評価する。3歳以降では、下肢帯は片足立ち、つま先歩き、かかと歩きでの評価も可能である。
年長児では、徒手筋力テストで評価する。座位が可能であれば、座位で頸部、上肢帯、上肢の筋力を評価し、臥位にして下肢、下肢帯を評価する。筋力の評価は、以下の6段階で行う。

6段階評価の基準

5:正常 normal 強い抵抗に抗して全関節可動域の運動が可能。
4:良好 good  弱い抵抗に抗して全関節可動域の運動が可能。
3:やや良好 fair 重力に抗して全関節可動域の運動が可能。
2:不良   poor 重力を取り除けば、全関節可動域の運動が可能。
1:痕跡 fair  筋の収縮はふれるが、関節の運動はみられない。
0:    zero  筋の収縮もふれない。

上肢バレー徴候

手掌を上に向けて両手を前に伸ばして、閉眼させる。上肢の降下、前腕回内、肘関節屈曲の有無を観察する。上肢が回内し、下がる場合を陽性とする。

上腕二頭筋

一側の肘関節を屈曲してもらい、患者の肩口を左手で押さえ、右手で前腕の遠位端を握り、肘関節を伸展して抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

上腕三頭筋

一側の肘関節を伸展してもらい、患者の肘関節のやや近位部前面を左手で押さえ、右手で前腕遠位端を持ち、肘関節を屈曲して抵抗する筋力を判定する。必ず両側を検査する。

握力

握力は小児用握力計で測定する。握る部位の広さを調節し、立位で握力計を強く握らせる。
両側を検査して、その測定値を記載する。

大腿四頭筋

台の上に座らせ、膝関節を伸ばさせ、大腿部の股関節よりを押さえて骨盤を固定し、もう一方の手で、足関節上を押さえて抵抗を加え、抵抗に対してどれだけ伸展できるかをみる。

大腿屈筋群

患者の下腿遠位部を右手で握って膝を伸展方向に抵抗を加え、膝関節を最大屈曲してもらい、抵抗する筋力を判定する。

前脛骨筋

足関節を背屈してもらい、患者の足背に手をあてがい、足関節を背屈させ抵抗する筋力を判定する。

下腿三頭筋(腓腹筋)

足関節を底屈してもらい、患者の足底に手をあてがい、足関節を底屈させ抵抗する筋力を判定する。

10.筋肉量

 全身の筋肉を観察し、筋萎縮、筋の肥大の有無をみる。筋萎縮や肥大がある場合は、その部位を記載する。

11.筋緊張

 筋緊張は筋肉を指でつまんだ時の硬さ(consistency)、関節をぶらぶら揺らしたときの振れ具合(被動性、passivity)、関節を他動的に伸展させた時の関節の可動域(伸展性、extensibility)で評価する。
 筋肉の硬さが硬くなるのはデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの腓腹筋、筋肉の硬さが柔らかくなるのは脊髄前角細胞が障害されるWerdnig-Hoffmann病などで、マシュマロのような柔らかさと表現される。
 フロッピーインファントと呼ばれる乳児期の筋緊張低下は知的障害を示す先天性疾患、脳性麻痺、代謝性疾患、筋疾患、脊髄前角細胞障害などでみられる。

 筋緊張低下の姿勢:座位で前屈させると胸腹部と大腿が密着し、二つ折れになる状態をdouble folding postureと表現し、筋緊張低下を表す。腹臥位の乳児の腹部を手で支えて水平に持ち上げると頭部と四肢がだらりと垂れ下がって、逆Uの字型の形になる状態を逆U姿勢(inverted U posture)と呼び、筋緊張低下を示す徴候である。

 筋緊張低下の徴候:両腋窩に手を入れて抱き上げると肩関節が持ち上がってしまって、手からすべり落ちそうになる状態をslip through sign、あるいはloose shoulderと呼ぶ。仰臥位で片方の手首を持ち、胸に肘をつけながら内転させ、上肢が襟巻きの様に首に巻き付く状態をscarf signと呼ぶ筋緊張低下の徴候である。仰臥位の児の足を持ち、股関節を屈曲させて、踵を頭の方に曲げて耳に踵がつく徴候をheel to earと呼ぶ筋緊張低下のsignである。

 伸展性(extensibility)は、関節可動域で評価する。仰臥位で股関節を90度屈曲させた状態で外転させると、乳児では80度前後に股関節が開排する。過剰な開排は筋緊張低下を示し、開排制限は股関節脱臼、痙性麻痺でみられる。膝窩角度は、仰臥位で股関節を最大に屈曲させて、足くびを頭の方に押さえた時の膝窩の角度をいう。新生児は90度でその後増加し、生後9か月で180度になる。
乳幼児で90度以下の場合は痙性麻痺を疑う。逆に乳児早期から著しく大きいときは筋緊張低下を示す。
関節拘縮、関節変形がある場合は記載する。

12.深部腱反射

 腱反射は正常、低下、消失、亢進、著明亢進で判定する。その記載法は下表に従い、判定結果を記載する。
  腱反射の評価基準と記載法

(3+):著明亢進(指で叩打するなど、ごくわずかな刺激で誘発できるくらい)
(2+):亢進
(+) :正常
(±) :低下
(−) :消失

  下顎反射

下顎の真ん中に検者の左第2指の指先掌側を水平にあてがい、指のDIP関節付近をハンマーで叩く。

  上腕二頭筋反射

両上肢を軽く外転し、肘を約90度前後に曲げ、肘関節の屈側で上腕二頭筋の腱をハンマーで叩く。必ず両側を検査して、左右を比較する。

  上腕三頭筋反射

肘関節を約90度屈曲した肢位をとらせ、肘関節の約3cm近位部伸側をハンマーで叩く。必ず両側を検査して、左右を比較する。

  腕橈骨筋反射(橈骨反射)

両上肢を軽く外転、肘を軽く屈曲、前腕を軽く回内し、手関節の2〜3cm近位部で、腕橈骨筋を伸展する方向に橈骨遠位端をハンマーで叩く。必ず両側を検査して、左右を比較する。

  膝蓋腱反射

両膝を約120〜150度に屈曲、膝蓋腱を確認し、ハンマーで叩く。必ず両側を検査して、左右を比較する。

  アキレス腱反射

下肢を膝関節で軽く曲げて足を左手で持ち、足関節を背屈した位置にして、アキレス腱をハンマーで叩く。必ず両側を検査して、左右を比較する。

13.病的反射、クローヌス (病的反射の判定;陰性、陽性を記載する。)

  バビンスキー反射(バビンスキー徴候)

患者の足を固定して、検者の指の爪で足底外側部を踵の方から趾先に向けてゆっくり擦過する。
足底の最外縁をこすることが重要である。足底の外側を踵から上にゆっくりと第5趾のつけね付近までこする。第I趾の背屈とその他の趾の外転(開扇現象)がみられた場合を陽性とする。
必ず両側を検査する。

  チャドック反射

ハンマーの柄や検者の指の爪で、踝の外側に沿って後ろから前へこする。第I趾の背屈がみられた場合を陽性とする。必ず両側を検査する。

  手掌頤反射

母指球筋をハンマーの柄でこすると同側のおとがい筋の収縮がみられる。中枢神経障害でみられることが多い。

  ワルテンベルグ反射

軽く屈曲した第K〜Nを手掌側にあてがった検者の指を介してハンマーで打つと、母指内転がみられる場合を陽性とする。

  ホフマン反射

検者の母指を中指の末節の爪にあて、検者の第K指で中指をはさみ、検者の母指で下方に向かってはじく。第I指が屈曲した場合を陽性とする。必ず両側を検査する。正常でも出現することがあり、左右差のある場合に意義がある。

  トレムナー反射

検者の右第K指で、患者の中指の手掌側先端を強くはじく。第1指が屈曲した場合を陽性とする。
必ず両側を検査する。正常でも出現することがあり、左右差のある場合に意義がある。

  足クローヌス

膝関節を屈曲した状態で他方の手を足底において急激に背屈させた時、連続して足が背屈底屈を繰り返せば陽性とする。クローヌスにならない場合でも急激に背屈させた時にひっかかりを感じたときは引っかかりありとして陽性所見として記載する。

14.原始反射

 原始反射は、脊髄、脳幹に反射中枢をもち、胎生5〜6か月より発達し、中脳、大脳皮質などの高次神経機構の発達に従って、生後2〜4か月で消失し始める。この原始反射は、正常な発達に欠かせない重要なものである。存在するべき時期に誘発できない、左右差がある、消失するべき時期に残存する場合には病的な意義がある。
  乳探し反射 (rooting reflex)

指または乳首が顔に触れると口をとがらせ左右上下に顔が動き乳首をとらえる反射で、新生児期に出現し、4〜6か月で消失する。

  吸啜反射 (sucking reflex)

口腔内にとらえた乳首または指を吸う反射で、乳探し反射と同じ経過をとる。

  モロー反射 (Moro reflex)

新生児の後頭部を手の平で約15cm持ち上げ、頭を急に落下させる。児は肘関節を伸展し、手を開き、上肢を外転(第I相)、その後上肢をゆっくり抱え込むように内転、屈曲する
(第K相)。6週までは第K相まで存在するが、それ以後は第I相のみとなり、4か月までに消失する。

  手掌把握反射 (palmar grasp reflex)

小指側より検者の指を挿入し、手掌を圧迫すると反射的に把握がみられる反射。生後3か月頃には消失し始め、遅くとも5〜6か月には消失する。

  足底把握反射 (plantar grasp reflex)

母趾球を圧迫すると足趾が屈曲する反射。手掌把握反射と同様に3か月までは存在する。

  逃避反射 (withdrawal reflex)

足底を軽く針で刺激すると両側の下肢を屈曲し、引っ込める反射を言う。脊髄反射の代表的反射で、3か月以降消失する。

  交差伸展反射 (crossed extension reflex)

一側の膝関節を伸展させ、同側の足底を刺激すると、他側の下肢が最初屈曲した後に、刺激を与えている手を払いのけるように伸展・交差する反射を言う。3か月以降消失する。

  足踏み反射(stepping reflex)

脇の下を抱え、体幹を前傾させて足底を床につけると、下肢を交互に屈曲して歩行するように動く反射で、新生児期にみられ、遅くとも2か月までに消失する。

  踏み直り反射(placing reflex)

脇の下を抱え、足背を机の端の裏側につけると、足を持ち上げ、机の上に足を踏み出す反射で、新生児期にみられ、遅くとも2か月までに消失する。

  ギャラン反射(Galant reflex)

新生児を腹部に手を当てて水平抱きにし、脊柱の外側に沿って胸椎下部から上方にこすると刺激された側を凹側にして体幹を弓状に曲げる反射で、4〜6か月で消失する。

  非対称性緊張性頸反射 (asymmetrical tonic neck reflex、ATNR)

仰臥位に寝かせ、体幹を固定し、頭部を回転させると、顔の向いている側の上下肢が伸展し、後頭部側の上下肢が屈曲する。2〜3か月で消失する。

  陽性支持反応 (positive supporting reflex)

足底が床に着くように体幹を支え、体重が下肢にかかるようにすると足指が背屈し、下肢が硬くなり、起立するような状態になる。生後2か月までが著明で、それ以後目立たなくなる。

15.姿勢反射

 姿勢反射は脊髄から橋の下位中枢による筋緊張反射(原始反射)と上位中枢による立ち直り・平衡反応群に分けることができ、中脳〜大脳皮質による立ち直り反射、平衡反応を姿勢反射とする。

  引き起こし反応(traction response)

仰臥位で両手を持って仰臥位から座位まで引き起こす時の反応である。新生児期では、頭は後ろでついて来ない(head lag)が、垂直まで引き上げると突然頭が上がって瞬間的に直立して静止する。
生後6週では、頭の遅れは目立たなくなり。16週では、引き起こしとともに頭がついてくるようになり、生後20週では、頭部の統御は完成し、頭は体幹と一緒に起き上がって来るようになる。
筋緊張低下が顕著な場合、頭がついて来ないだけでなく、引き起こされる際の四肢の収縮もみられないことが多い。

  パラシュート反射

側方パラシュートは、座位の姿勢にて前方、側方、後方に倒した時に体幹が転倒するのを防ぐ上肢の伸展反応をいう。7〜8か月で出現し、座位の安定と関係している。
前下方パラシュートは、乳児を立位懸垂位から急激に頭を床に向けると、手を開いて体を支えるかのような反射で、8か月頃出現する。軽度の片麻痺の診断に有用である。

  ランドー反応

腹臥位にして、胸部を支えて持ち上げる、自動的または他動的に頭を挙上すると脊柱と下肢は伸展し、次に頭を屈曲すると脊柱と下肢は屈曲する。6か月より出現し、2歳半まで持続する。

  ホッピング反応

立位にし前後左右に倒すと平衡を保持するために、前方に倒すと下肢を前に踏みだし、後方に倒すと足関節が背屈し、側方に倒すと一方の足が倒された側に交差して出て、体を支える反応をいう。15か月〜18か月で出現し、立位の保持のための大脳の成熟を示し、生涯持続する。

16.髄膜刺激症状

 大泉門の大きさは菱形の辺の中央での長さを縦横で計測する。その後大泉門の張りを観察する。
 大泉門の緊満ないし膨隆は頭蓋内圧亢進を意味する。泣いていない状態で評価する。

  項部硬直

仰臥位で首を前屈させる時に抵抗がある場合を陽性とする。この時膝関節が屈曲挙上するのがブルジンスキー徴候である。

  ケルニッヒ徴候

仰臥位で、股関節、膝関節をほぼ90度に屈曲させ、その位置から下腿を伸展させて膝関節を180度へと開いて行く。正常であれば広い角度に伸展できるが、髄膜刺激症状がある場合は、抵抗があり伸展させにくく、135度以上には伸展できない。

  ブルジンスキー徴候   

仰臥位にした患児の頭の後ろに手をあてて、頭を前屈させる。陽性であれば、股関節、膝関節が自動的に屈曲する。

17.神経学的所見のまとめ

  これまでの異常所見をまとめて記載する。

【参考資料】

1)坂本吉正.小児神経診断学.東京・大阪・京都:金原出版,1978.
2)鴨下重彦,二瓶健次,宮尾益知,桃井真里子.ベッドサイドの小児神経の診かた.東京:南山堂,
  1993.

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